ビオラを弾かれる方であれば、ご存知でしょうか?
ビオラは、バイオリン・チェロと違って、
標準のサイズがありません。
日本国内で良く見られるサイズは40cm前後。
欧米では42cm前後。
なぜこのように幅が有るのでしょう?
実は、バイオリンの音域・サイズから相対的に導き出されるビオラの理想的ボディレングス(最下部からネック付根部までの長さ)は、なんと53cm になってしまいます。しかし、そんな大きさの楽器を顎にはさんで弾くことは、人類の腕の長さから考えると、物理的に演奏不能です。例えば、私は肩から手首までで既に、53cmです。
そのため、実際には、ビオラには妥協案としてボディレングス「38.5cm〜43.5cm」
の様々なサイズのものが存在します。(私の見たことのあるサイズです。もちろん世の中にはもっといろいろあるでしょう。楽器製作者がヴィオラだと思って作っちゃえばそうなるだけです。)
世界的に見ると、日本では小さ目の方が好まれているようです。
体格差からして当然の結果でしょう。
しかし・・・
小さいビオラの方が本当に弾きやすいでしょうか?
ビオラのサイズ選びには、多くの誤解が生じ易いです。
多くのかたが、左手・左腕のサイズを理由に小さい方が左手の運びの上で、弾きやすいと思われているようです。それは、確かにそのとおりでしょう。
しかしそれよりも、音楽の現場でビオラのサイズが本当に問題となるのは右手です。上述したように、そもそもの生い立ち自体、音が出しにくくなっているビオラ。小さいほど素直に音を出すのが難しいし、誰が弾いても最初はよくまわらない左手にばかり目をむけてばかりで、弓をいかに使うかという本来ビオラ奏者が主に取組むべき点がおろそかになって、「ヒーヒー」という楽器を鳴らしきっていない音や、「ビャービャー」という弦の圧力に対して弓圧過多の音が、あちこちで発生している原因はここにあります。
サイズの違いによる、楽器演奏・音響性質の違い
- 小さい場合、左手の早い動きが物理的に楽になる。
- 大きい場合、共鳴箱としての体積が大きくなり、豊かな音色、大きな響きの可能性が広がる。
- 同じ弦を使った場合、弦の張力の違いとしても表われる。
ひいては、右手の運弓(圧力・速さ)の違いを要求する。
楽器の音が鳴っている状態を理解していないと難しいのですが、ポイントとなるのは・・・、
「右手にも変化が必要」ということです。このような違いは他にもまだまだあります。
このように考えると、ビオラを選ぶとき、ボディレングスの違いを弾きやすさの要素だけに捉えて選ぶことは、到底できません。結局そのサイズの中で、「音はどうなのか?」・「どれだけ良く作られているか?」・「自分の演奏スタイルに合っているのか?」これらのことの方が重要です。また、「製作家がビオラという楽器をどれだけ理解しているか?」というということも、ビオラとしてとっても大事な要素となります。
ただ、逆にサイズに関してのみいえば、私は可能な限り大き目のビオラ探すべきだと考えます。もちろん、誤解のないように言っておきますが、物理的に不可能な大きさは人それぞれあります。しかしその中でも、その人なりの無理のない範囲で、最大サイズのものを探した方が良いということは言えます。少なくとも、「弾きやすいから、できるだけ小さいものを!」という探し方は、ビオラ弾きとしてはもったいないですね。
ビオラは製作者の製作上の工夫・センスが現れやすい楽器です。それだけに、弓や弦もその選択もより時間が掛かる楽器です。「42cm以上のViola」用の
ビオラ弦なんてものもあるんです。
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